忍びの地図
Marauder’s Map
もしかすると (ハリー・ポッター、ロン・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャー、そしてトム・リドルを含め)、忍びの地図の作者であり貢献者である4人ほど、ホグワーツの城の中も外も徹底的に、そして校則を破りながら探検した者はいないかもしれない。その4人とは、ジェームズ・ポッター、シリウス・ブラック、リーマス・ルーピン、ピーター・ペティグリューである。
当初、ジェームズ、シリウス、ピーターを学校の探検に駆り立てたのは、悪行という動機だけではなかった (その側面もあるが)。彼らの大切な友人リーマス・ルーピンが、己の中の狼に耐えられるよう助けたいという強く望んでいたのである。人狼薬が開発される以前は、ルーピンは毎月の満月の夜、極度の苦痛を伴う変身に耐えることを強いられていた。3人の親友がその状況に気づくと、彼らはルーピンが変身の度に味わう孤独と苦しみを和らげる方法を探し求め、彼が自分たちを傷つけることなく一緒にいられるように (未登録の) 動物もどきの習得法を学ぶという選択肢にたどり着いた。
シリウス・ブラック、ピーター・ペティグリュー、ジェームズ・ポッターの、それぞれ犬、ネズミ、牡鹿になることのできる能力によって、彼らは夜に紛れて見つかることなく城中を探索できるようになった。その間、ジェームズ・ポッターの透明マントの助けを借りながら、時間をかけて城の内部の地図を制作したのである。
忍びの地図は、ハリー・ポッターの父親、名付け親、お気に入りの先生を含む4人の友人達が高度な魔法の能力を持っていたことを示す永続的な証である。彼らがホグワーツの学生時代に作った地図は白紙の羊皮紙のように見えるが、「我ここに誓う。我、良からぬことを企む者なり」と唱えると作動する。4人の作成者のうち3人の場合では、ジョークとして捉えられるべきだろう。彼らが書いた「良からぬこと」とは決して闇の魔術のことではなく、校則破りを指す。似たような虚勢が、地図に彼らのニックネームが使われていることからもうかがえる (『ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングス』)。
地図を作るために使われているのは、高度で見事な魔法である。ホムンクルスの術を使用することで、地図の所有者は城にいる全ての人間の動きをたどることができる。また、彼らの天敵セブルス・スネイプの好奇心を (できるだけ侮辱的に) 永遠に跳ねつける魔法もかけられている。
作成者達が地図を手放した正確な状況はハリー・ポッターの本では描かれなかったが、彼らが無理をしすぎて、ついにアーガス・フィルチに追い詰められたのだろう、そしてそれはおそらく最大のライバルであるジェームズ・ポッターの悪事を暴くことに固執していたスネイプの密告によるものだろうと、簡単に結論づけることができる。この傑作はシリウス、ジェームズ、リーマス、ピーターが最高学年の時に没収され、彼らの誰も、用意周到で疑い深いフィルチから奪い返すことはできなかった。いずれにせよ、彼らが学校で過ごした最後の数ヶ月、優先順位は変わった。ホグワーツの外の世界、ヴォルデモート卿が勢力を増していた世界に対して、遥かに真剣に、そして集中的に向き合うようになったのである。地図の作成者の4人全員が、まもなくアルバス・ダンブルドアを長に持つ反逆組織、不死鳥の騎士団に入団することになり、彼らのかつての学校の地図は––それがどんなに創造力に富む見事なものであったとしても––もはや郷愁のかけら以外の使い道がなくなったのである。
しかしながら、忍びの地図は若きウィーズリーの双子にとっては計り知れない使い道があった。フレッドとジョージが地図を手に入れた話は、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』で語られている。のちに彼らが地図をハリーに贈ったのは、ハリー・ポッターへの確かな敬意と、ハリーがまだ彼らの誰も完全に理解していなかった運命を歩むうえで助けを必要としているという信念の表れであり、図らずとも作成者のうちの1人の子どもに受け継がせたのである。
その後、学校で変装した死喰い人が探し物に役立つだろうと考え、地図はハリー・ポッターから没収された。
J.K. ローリングのことば
忍びの地図はその後、真の作成者 (私) の悩みの種になりました。ハリーに情報の自由を少しばかり与え過ぎてしまうことになるからです。私はハリーがマッドアイ・ムーディー (と思われる人物) の空っぽの部屋から地図を回収する場面を書きませんでした。そして時々、この失敗に便乗して地図をそこに置きっぱなしにしなかったことを後悔しました。しかし、私は『死の秘宝』でハリーがジニーを表す点が学校を動き回るのを眺めるシーンを気に入っています。ですから全てを考慮すれば、ハリーに正当な財産を取り戻させてよかったと思っています。