top of page

セストラル

Thestrals

 黒く骸骨のようで、コウモリの羽のついた馬のような見た目をしている。ただし、真に死と関わったことのない者には見えないため、セストラルには少し気味が悪いというイメージがある。過去数世紀では、彼らの姿を見るのは不吉だと考えられていた。そのため、セストラルは長い間捕獲されたりひどい扱いを受けたりして、本当の性質(優しく穏やか)は広く誤解されてきた。セストラルは不運の予兆でも、または (不気味な見た目をしているにもかかわらず) 人間の脅威となるわけでもない。自分たちを初めて見た人が恐怖してしまう傾向があるということを常に想定しているのだ。

 セストラルが見えるということはその人が死を目撃したことがあり、死とはどういうものか思考的ではなく感情的に理解している証である。そのような事象を理解し始める正確な瞬間は人によって大きく異なるため、彼らの意義が正しく理解されるまで時間がかかったのは驚くべきことではない。ハリー・ポッターは目の前で母親が殺されてから何年もの間セストラルが見えなかったが、それは彼が当時ほとんど赤ん坊と言っていいような年齢で、自身の喪失を理解することができなかったためである。セドリック・ディゴリーの死の後でさえ、彼の心に死の意味が染みていくまでに数週間かかった。ハリーはこの時になってようやく、ホグズミード駅からホグワーツ城へ馬車を引くセストラルが見えるようになったのだ。一方で、幼い頃に母親を亡くしたルーナ・ラブグッドはすぐにセストラルが見えた。これは、彼女が直感力に優れており、精神的に豊かで死後の世界を恐れていないためである。

 やや怖い見た目をしているものの、この肉食の馬たちは次のステージを象徴し、そして彼らを信じる者には誠実さと従順さで報うのだ。セストラルは大ブリテン島とアイルランド原産であるが、フランスとイベリア半島のペニンシュラの一部でも発見されたことがある。彼らは馬好きなケルト人を祖先にもつ魔法使いたちと関わりがあったと思われる。その他の地域にも、セストラルに相当するような独自の種が生息する。


著: J. K. Rowling/訳: MORE 4 JP

bottom of page